2026/01/08 23:54
「金麦がビールになるらしい」
ここ数年、そんな言葉を耳にしたことがある方も多いだろう。しかし、まず正確に押さえておきたい点がある。2026年10月の酒税法改正が施行されるまで、金麦はビールではない。 現時点では、あくまで「発泡酒」と呼ばれる区分の商品である。
それでも、この話題がこれほど注目を集めるのはなぜか。そこには、日本独自とも言える酒税制度の歴史と、時代の変化に対応しきれなくなった制度の限界がある。
■ ビール・発泡酒・新ジャンルという“日本特有の分類”
日本では長らく、ビール類は以下のように分類されてきた。
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ビール:麦芽比率50%以上
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発泡酒:麦芽比率50%未満
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新ジャンル:麦芽を使わない、あるいは別原料を用いたもの
この区分は、味や製法の違いというよりも、税率を決めるための便宜的な線引きだった。麦芽使用量が多いほど税金は高くなり、少ないほど安くなる。消費者の側から見れば、同じ「ビールのような飲み物」なのに、価格には大きな差が生まれていた。
その差を埋めるために、各メーカーは驚くほどの技術革新を重ねてきた。麦芽を減らしながら、いかにビールらしいコクや香りを表現するか。金麦をはじめとする新ジャンル商品は、まさにその結晶だと言える。
■ なぜ、酒税法は改正されるのか
では、なぜ国はこの仕組みを変えようとしているのか。理由は大きく三つある。
一つ目は、税の公平性。
「似た商品なのに税率が大きく異なる」という状態は、制度として分かりにくく、不公平感を生みやすい。
二つ目は、市場のゆがみ。
本来は味や品質で競争されるべきところが、「いかに税率を下げるか」という方向に技術開発が向かってしまった。
三つ目は、国際基準との乖離。
海外では、ここまで細かく原料比率でビールを区分する国は少ない。日本の酒税制度は、世界的に見ても特殊な存在になっていた。
こうした背景から、国は段階的に税率を見直し、最終的にビール・発泡酒・新ジャンルの税率を一本化する方針を打ち出した。その到達点が、2026年10月なのである。
■ 「金麦がビールになる」という言葉の正体
ここで、冒頭の話題に戻ろう。
「金麦がビールになる」という表現は、正確にはこう言い換えるべきだ。
制度上の区分として、“ビールと同じ税率・同じ扱いになる”
原料や製法が突然変わるわけではない。金麦が長年培ってきた味わいは、そのままに、制度の側が追いつくというのが実態だ。
これは、メーカーにとっての勝利でもあり、同時に新たな競争の始まりでもある。価格差という“逃げ道”が消えたとき、問われるのは本当の意味でのブランド力と品質だからだ。
次回は、
「なぜメーカーはこの改正に反対しないのか」
「大手と中小で何がどう変わるのか」
を、より踏み込んで見ていきたい。
一杯のビールの裏側には、制度と経済、そして長い時間をかけた選択の積み重ねがある。そのことを知ると、グラスの中の黄金色が、少し違って見えてくるかもしれない。
※本記事の内容は、酒税法や市場動向に関する公開情報をもとに、当店なりの理解でまとめたものです。
解釈や見方には幅があり、一つの考え方としてお読みいただければ幸いです。
