2026/01/14 20:00

酒税法改正によって、ビール・発泡酒・新ジャンルの税率が段階的に一本化されていく。
この流れを聞いたとき、多くの人がまず思い浮かべるのは、次のような疑問だろう。

――発泡酒や新ジャンルで勝負してきた中小メーカーやPB(プライベートブランド)は、切り捨てられてしまうのではないか。

確かに、表面的に見れば不利に映る要素は少なくない。
税制の歪みを活用して生まれたカテゴリーが消え、価格差という武器は弱まる。大手メーカーはブランド力を背景に「正面からのビール勝負」に戻っていく。

しかし、この改正を単純な敗北と捉えるのは、少し早い。

■ 不利になるのは「仕組みに依存していた商品」

まず整理しておきたいのは、すべての中小メーカーやPBが一律に不利になるわけではないという点だ。

本当に厳しくなるのは、

  • 税率差だけを理由に存在していた商品

  • 「安さ」以外の説明ができない商品

である。

発泡酒や新ジャンルという言葉自体が、消費者にとって分かりにくくなっていたのも事実だ。
「なぜ安いのか」「ビールと何が違うのか」を説明しなければならない商品は、制度が整理された時点で役割を終える。

これは中小メーカーの努力不足というより、制度が変わる以上、避けられない整理と言える。

■ しかし「中小=弱者」ではない

一方で、酒税法改正は中小メーカーにとって、別の扉も開いている。

それは、
“ビールを名乗れる商品を造れる”
という点だ。

これまで中小メーカーの多くは、

  • 技術はあっても

  • 設備はあっても

  • 税制上「ビール」を造る意味が薄かった

という立場に置かれていた。

しかし税率が一本化されることで、
「発泡酒だから」「新ジャンルだから」という制約は薄れていく。
中小メーカーが、より正直に、より分かりやすく、品質で勝負する余地は確実に広がる。

量で大手に勝つことは難しくても、

  • 味の方向性

  • 原料選び

  • 製造ロットの柔軟さ

といった点では、むしろ中小の強みが生きる。

■ PB商品は「切り捨てられる側」ではない

PB商品についても、同様だ。

PBは単なる“安物”ではない。
本質は、

  • 小売が価格と品質を設計できる商品

  • 棚の主導権を握るための戦略商品

である。

税率一本化によって「安さだけのPB」は淘汰されるかもしれない。
しかしその代わりに、

  • 分かりやすい価格

  • 分かりやすい品質

  • 分かりやすいカテゴリー

を備えたPBビールが成立する。

これは小売にとっても、消費者にとっても悪い話ではない。

■ 中小メーカーの現実的な生存ルート

では、中小メーカーはどう生き残るのか。

現実的な答えは明確だ。

  • 独立ブランドとして尖る

  • あるいは、PBや大手の委託製造として安定を取る

どちらも「負け」ではない。

むしろ、PBの製造を担うことは、

  • 設備稼働率の安定

  • 長期契約

  • 経営の見通し

を得ることでもある。

かつてのように、名より実を取る関係が、より一般的になっていくだろう。

■ 酒税法改正の本質は「整理」である

酒税法改正は、誰かを意図的に排除するための制度ではない。
分かりにくくなりすぎた市場を整理し、
「何を飲んでいるのか」を消費者に正しく伝えるための調整だ。

確かに、すべての事業者が同じ位置に立てるわけではない。
しかし、制度が明確になることで、戦い方もまた明確になる

価格だけに頼らない商品。
背景を語れる商品。
選ばれる理由を持つ商品。

それらを持つ中小メーカーやPBにとって、この改正は必ずしも逆風ではない。

市場は縮むかもしれない。
だが、その中で残る価値は、よりはっきりと見えるようになる。

酒税法改正とは、
「弱者を切る制度」ではなく、
本当に何を売っているのかを問い直す制度なのだ。

※本記事の内容は、酒税法や市場動向に関する公開情報をもとに、当店なりの理解でまとめたものです。
解釈や見方には幅があり、一つの考え方としてお読みいただければ幸いです。